事業化の背景

 ロボットレストラン(RR)用シミュレータの発案は、2018年に遡ります。当社代表が、東京都立産業技術大学院大学(産技大)の成田研究室に所属していたときに発案致しました。
 2018年当時、まだ世間はコロナ禍に直面することもなく、日本の外食産業は慢性的な人手不足に悩んでいました。繁忙時のファミレスに行くと、席は空いているのに下膳(食べ終わった後の食器の片付け)まで店員の手が回らず、長い行列で待たされることによるイライラを経験することが少なくありませんでした。
 そのような経験をした際、日本はロボット大国と言われているのになぜロボットが導入されないのだろうとの疑問が頭に浮かびました。人手不足で店員が足りないのであればロボットに手伝ってもらえばよいのではないかと思ったのです。
 調べてみると、飲食店用(特にフロアサービス用)のロボットは、既に存在しました。しかし、少なくとも日本においては実際に飲食店に導入されたという話をとんと聞きません。そこで、大学院での研究テーマとして、設定した店舗レイアウトにおいてロボットが実際に働いている様子を可視化して飲食店用ロボットをPRするソフト(店舗内の動作シミュレーションソフト)を発案し、研究室内で報告しました。その案に対し、指導教授から、各メーカーやシステムインテグレータ(SIer)が困っているのはそこではないとのダメ出しが入りました。
 そこで、さらに検討を進めた結果、店舗内の動作シミュレーションに加えて、経営的な観点を含めたシミュレーションを思いつきました。すなわち、ロボットを導入すると、売上、支出、利益といった経営指標がどのように変化するかをシミュレートするのです。これにより、ロボット導入ベンダー(SIer)やロボットメーカーは経営的メリットや具体的イメージをレストラン経営者に伝え易くなることが期待できます。
 この案は、研究室全体での研究テーマに選択されて、研究室メンバー全員で研究・開発を進めることになりました。この研究内容(RR用シミュレータ)を日本ロボット学会RSNPコンテストに応募したところ、優秀賞(日本ロボット学会 ネットワークを利用したロボットサービス研究専門委員会賞)とグッドコンセプト賞を同時受賞致しました。また、受賞のご褒美として、ビッグサイトでの展示会「Japan Robot Week」での出展を経験させて頂く機会を得ました。
 研究室での研究は2019年2月に終わることになりましたが、研究内容をこのまま放置するのはもったいない、ぜひ事業化を進めようと決意し、大学院の同期と共に、当社を設立しました。
 
 コロナ禍により外食業界は壊滅的なダメージを受けています。
時短要請が取り下げられても、感染リスクを懸念してなかなか働き手(バイトや正社員)は戻って来ません。また、ロボットを導入することで、より衛生的にサービスを提供できることも期待されます。さらに、コロナ禍とは関係なく、今後日本の労働力人口は減少し続ける見込みであり、将来的な労働力不足をどのように補うかも、国全体での重要な課題です。実際、大手外食企業は、徐々に飲食店用ロボットの導入を進め始めました。
 そのため、ウィズコロナおよびアフターコロナにおいても、飲食店へのロボット導入を促進する必要性は今後ますます高まることが予想されます。これに伴い、当社のRR用シミュレータを活用可能な場面も増えることを期待しています。

事業の目的

 上記のように、2018年の発案当初は、飲食店の人手不足解消のためのロボット導入促進の一助としてのロボットレストラン(RR)用シミュレータの開発を目指していました。
 コロナ禍に伴う外食業界にダイナミックな変化が生じたものの、飲食店におけるロボット導入の必要性・動機付けは今後高まっていくことが予想されます。
 そのため、当社製品としてのRR用シミュレータにより、飲食店におけるロボットの動きおよび経営指標をシミュレートして、ロボット導入を補助する(結果として日本を元気にする)という目的は現在も変わっていません。

当社シミュレータについて

1.概要
(1) 基本的な機能
(2) 大まかな流れ
(3) 経営条件・シミュレーション条件の設定(ステップS1)
(4) 店舗内の動作シミュレーション(ステップS2)
(5) 経営指標の出力(ステップS3)
(6)まとめ
2.その他
(1) 受賞歴
(2) 特許出願

 
1.概要

(1) 基本的な機能
 当社のRR用シミュレータは、主に、以下の2つのシミュレーションを行います。
・飲食店内でロボットが働く様子を表示する「動作シミュレーション」
・ユーザによる設定条件および動作シミュレーションの結果を用いて経営指標を算出する「経営シミュレーション」

(2) 大まかな流れ
 上記2つのシミュレーションを行うため、当社シミュレータは、以下のような大まかな流れで動作します。

(3)経営条件・シミュレーション条件の設定(ステップS1)
 この工程では、動作シミュレーションおよび経営シミュレーションのための条件設定を行います。
 経営条件としては、例えば、下記のものを含みます。
 売上条件:客単価、営業日数(、席数、席回転率)
 支出条件:人件費、食材費、家賃、光熱費、ロボットの原価償却費、ロボットの保守費用、その他諸費用

 シミュレーション条件としては、例えば、下記のものを含みます。
 ロボット仕様:メーカー、型式、寸法、台数、制御ロジック
 店舗レイアウト:テーブルや席の数・配置

 以下は、条件設定のための入力画面の例です。

(4)店舗内の動作シミュレーション(ステップS2)
 動作シミュレーションでは、設定された店舗レイアウトにおいて、顧客、店員、ロボットそれぞれが動作します。
 ユーザ(飲食店経営者など)は、この動作シミュレーションを見ることで、ロボット導入時の店舗内の様子をイメージすることが可能になります。

 以下は、動作シミュレーション時の表示画面の例です。


 この例では、ロボット導入ありの場合を画面左側に、ロボット導入なしの場合を画面右側に表示しています。
 
(5)経営指標の出力(ステップS3)
 経営条件・シミュレーション条件の入力(ステップS1)での入力内容に加え、動作シミュレーション(ステップS2)の結果(席回転率)に基づいて経営指標を算出・出力します(経営シミュレーション)。

 以下は、経営シミュレーション結果の表示画面の例です。

 上記例では、動作シミュレーションの画面に経営指標の出力を一緒に表示した例です。画面上側左端にロボット導入ありの場合の経営指標を、画面上側右端にロボット導入なしの場合の経営指標を表示しています。

(6)まとめ
 以上のように、当社シミュレータでは、
・動作シミュレーションによりロボットが動作する様子を視認することができます
・経営シミュレーションによりロボット導入時の経営指標をシミュレートすることができます。

2.その他

(1) 受賞歴
 RR用シミュレータに関し、産技大成田研究室は、2018年日本ロボット学会 RSNPコンテストにおいて、優秀賞(日本ロボット学会 ネットワークを利用したロボットサービス研究専門委員会賞)とグッドコンセプト賞を同時受賞致しました。
 受賞の詳細はコチラをご参照ください。

(2) 特許出願
 当社シミュレータについては、特許権(特許6925599号、7305206号)を取得済です。